5年ほど前にも木の住まい塾のことを紹介させていただいたことがあります。「本当に良い家とは何か」について、皆さんと一緒になっていろいろ考えてきました。
今回は環境にやさしい木について、もう一度考えてみませんか。地球の温暖化が叫ばれており、私たちの生活を見つめなおす必要があると思います。今、必要なことは何かと申しますと「安全を木に託す」ということではないでしょうか。
なぜなら樹木は休むことなく二酸化炭素(CO2)を吸って酸素(O)を私たちに与えてくれています。そして何ひとつ、要求しないでただひたすら貢献するだけです。木は空気と同じようになくてはならないものであり、これも空気と同様に身近な存在で、そのありがたさと高度な価値が忘れられています。
皆さんがよく知っているこんなこともあります。製品(製材)化された木は、調湿作用があります。それは周囲が乾燥すると水分を吐き出し、湿気ると水分を吸ってくれます。なぜこのことが重要かと申しますと、例えば理想的な湿度は40~60%と言われていて、ウイルスは高湿、低湿下では長時間生き続け、適度な50%前後では大半が死滅すると言われています。
相対湿度と微生物の相対関
特にインフルエンザは適度な温度と湿度に予防効果があるというデータがあります。
インフルエンザの生存率
こんなことからも住まいに木を多く取り入れる必要があると言えます。ただ良い点もありますが、世の中には必ずといってよいほど絶対に良いと言い切れることは少ないと思います。木にも長所と短所がありますが、自然界に迷惑をかけるようなマイナス面はないと言い切れると思います。
木のない環境で人類が生存することは不可能です。戦争の絶えない地域には木が少なく、自然の恩恵も少ないような気がします。今、必要なことは「安全を木に託す」ということではないでしょうか。
魚付(うおつき)保安林の松
上の写真は神奈川県の真鶴半島にある魚付(うおつき)保安林の松です。樹齢は350~400年と言われています。魚付保安林の役目は水面にできる陰、樹冠から落ちる昆虫、森林から出る養分、川が濁るのを防ぐなど魚が棲(す)み良い環境をつくってくれます。魚も樹木によって助けられているのです。
伊豆半島の南部に位置する下田市の下田公園。戦国時代の山城の跡で、あじさい祭りでも知られる場所ですが、この岬を鵜(う)島と呼び、この森も魚付林として大切に保護されてきました。