第9回:触ると暖かい桐

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「桐」という字は木と同じと書きます。しかし桐(きり)はゴマノハグサ科の草の一種です。桐はほかの木とどこか少し違うような気もします。

昔はタンスや下駄などに使われ、触れてみると暖かく感じられます。なぜだろうかと思い、資料を探したところ北九州の工業試験場で調べた輻射(ふくしゃ)の遠赤外線の測定結果によると、遠赤外線が多く出ていることが確認されたと記されていました。またマイナスイオンも出ているようです。

私は桐の構造を電子顕微鏡を使って調べてみました。専門書によると杉や桐と違って薄壁の小室をたくさん持つチロース構造に特徴があると述べられています。この不思議な構造こそが、遠赤外線を発生させる暖かさの秘密なのです。

昔から「頭寒足熱」とよく言われ、桐をフローリングに使えば効果が出るのではと考え、桐でまちおこしをしている福島県三島町に行って調べて見ましたが、天井板に使っていたものの床という話は聞けませんでした。

私の会社では家具を販売しており、タンスなどに使う桐はほとんど中国から入ってきていると聞いていましたので、桐のことを勉強するために数年前、中国・河南省に行って来ました。

丸裸になった山にも軍隊などによって桐が植林されていた=2004年、中国で、中央は井川会長
丸裸になった山にも軍隊などによって桐が植林されていた=2004年、中国で、中央は井川会長

上海から飛行機で一時間半ほどの町の野原一帯が桐(植樹)と麦の畑でした。桐の栽培面積は日本の国土ぐらいあると聞きびっくりしました。桐の製材工場も多くあり、日本向けにいろいろな物が作られていました。

この地方では1年のほとんど雨が降らず、干ばつを防ぐために桐が植えられたと言っていました。桐と麦が交互に栽培され、そのコントラストが広大な大地を美しく彩っていました。花のシーズンには紫色の鮮やかな花が美しく咲き誇り、人々の心を和ませるに違いありません。

また丸裸になった山に、軍隊や若者らを動員して桐の植樹が行われている場面に偶然にも遭遇しました。統率の取れた人海戦術のすごさにも、中国らしさを感じるとともに驚かされました。